"喜劇!駅前林道"単車偏屈者遍歴


 
煩悩:GPz750                     =当時の「GPzレストア日記(2000/2/27)」より抜粋=


2000/2/19


今日は土曜日で休み。GPzを取りに行く日だ。

GPzは店先に置かれていた。代車のシュートを店内に入れ、親父から一通りの説明を受ける。
一応、交換部品はガソリンコックとフューエルフィルターのみ。ほぼ一週間、店内に置いて
いたそうだが一向にガス漏れの状態は出てこない様なので「まずOKでしょう」との事。
親父がキーを持って来てチョークを引いてセル一発で「ガフォー」と言う爆音でGPzに火が入った。
エンジンが冷め切っていた様でなかなかアイドリングが安定しない、その度に近所迷惑を考えず
軽く4000rpm位までレーシングしてみるが、アクセルを戻すと「バリッバリバリッ」とアンダーフ
ァイヤーの連続。見かねた息子がヤードから出て来て手慣れた様子でスロットルを開けたまま、
チョークを何度か引いたり戻したりを繰り返し漸くアイドリングが安定する。
息子に依ればどうもチョーク自体がおかしい様で、偶に確実に戻らなくなる事があるとの事。
この辺もいづれ交換か?

とにかく直ったのを確認して、店で出してくれたコーヒを一杯頂いて、早々に試乗する事にする。
エンジンに火を再び入れ、「何か有ったらまた来ますね」と伝え、親父と息子に見送られて店を
出た。一速から二速までかきあげ、スロットルをガバッと開けると、調子よく「ガフォー」と言
いながら加速して行く。なかなかエエやんけやっぱり。産業道路に入り暫くは60Km/H位で
様子を見てみる。途中工事中で路面が荒れている個所があり、ここでやはりある懸念が浮かぶ。
前後のサス、特にリアが全く路面に追従してない。こんな速度でヒョコヒョコとホッピングする。
まあ基本的に17年前の単車に多くを望むのは無理と言うもの。それは解っているけれど、長距離
に出たら疲れるやろうな、ワィンディングでも恐怖やろな、と色々と不安材料が頭をよぎる。

R298に出て、R17旧道のアンダーパスでトップ5速140Km/Hを出してみる。
ブレーキがイマイチ信用出来ないし、まだまだ体を単車に馴らしきれてないので、これぐらいしか
出せないが、路面状態が良いためか車体はピタッっと安定した走りを見せる。
まあ速度域は大した事は無いが、排気音は「ガフォー」から「クォーン」に変わっていき気持ちが
よい。これが空四の醍醐味やろう。

途中の信号待ちで、体が震えているのに気付く。
確かに寒いからだが、それだけでは無い。何か何時裏切られるか解らない、漠然とした不安と久々
に昔から憧れていたGPz750に乗っていることの喜びがない交ぜになって、体が震えているのだ。
こんな感覚は今だかつて味わった事が無い。寅の時も、XR6の時も、TDMの時もこんな気持ちになっ
た事は無かった。不思議な感覚。

(中略)

この駐車場でGPz750Fに乗った人と出会う。偶然会っただけなのに、何だかんだとお互い
の単車を見てしばし歓談。世の中には私以外にもモノ好きが居るんだと実感。なんかこうなると後
に引けないと言う感じになってきたのは確かだ。


2000/2/22


この日からいよいよ、レストア第一段階最後の仕上げ=リアカウルの補修作業、に入る。
事前に買っておいた耐水パーパー#120を使って完全に乾いた状態のパテ埋部分を研磨して行く。

最初は手始めに小さな穴4つを研磨してみる。#120の耐水ペーパーて確かに粗目だが、そ
んなに簡単に研磨できるとは思ってなかった。けどやってみると至極簡単に穴4つのパテの盛り
部分は見事に研磨されて「面」も出た。こうなるともう病み付き。
一番大きなパテ埋部分、しかも素人が片手間に盛ったので結構デコボコだらけだったのだ
が、只管ゴシゴシ、ゴシゴシやって、段々面が出てくる様になった。

が、ここで失敗発見。本来研磨する予定の無い折角のライムグリーン塗装の部分もしっか
り研磨されて塗装が薄っすら若禿げ状態になってしまった。
途端に寒い中、必死で研磨してる自分が惨めに思えて来て、やる気が失われたので作業終了。


2000/2/23

いよいよ研磨も二日目に入る。只管ゴシゴシ、ゴシゴシ、磨いては研磨部分を水で洗い流
して確認。
面が出ていない部分は極力力を入れ只管磨く。

何も考えない時間が過ぎて行く。しかも一番パテが盛られた所はコレデモカ?と言う位に
パテが盛られていて、そんな部分を見ていると如何にパテを盛るとき自分がやっつけ仕事をしていたかが解り、この期に及んで深く反省。

で、研磨した部分を綺麗に水で流し、パテの粉を全て洗い流して拭きあげる。
見栄えは自分で言うのも何だが見事な研磨状態になっていた。
この後、電話が掛かって来たり色々あり、カッティングシートを納得した感じで無事貼り
終えたのは午前0時を廻っていた。なーにやってんだか?!


2000/2/25

クソ寒い中、翌日のツーリングに備えGPzのテールカウルを車体にセット。
まあ見栄えもなかなか決まってるし、なんか子供騙しみたいだが結構格良く仕上がった。

これにて一応の「走れる様にする」レストアの初期段階は終了。
まあ細部を見ずとも不満は大有りなんだが、基本的に17年前の単車を乗って楽しめる状態
にする事が如何にカネをヒマを掛けねば出来ないものなのか良くわかったつもり。
まだまだ「走って満足の行く状態」にする茨の道はこれからも続く。

本人も何時までこんな事を続けるのか?ぜーんぜん解ってないから性質が悪い。
まあここまでやってもGPzにしがみついている(以前の私だったらとっくの昔に、結論を
出しているのだが)のはやはりGPzの面影とか過去の思い入れとかを引きずって捨て難いからなんでしょうね多分。

なんか若い頃、只管恋焦がれた女の子と結局縁が無く十数年、その女の子が男に捨てられ
てボロボロになった中年の妖艶な女性になって、ひょんな事から再会してとんでもなく果てしなく泥沼の中年の恋に嵌って行く。
なんて感じがするんだが、、、。


第一編一応完。第二編連載未定。

その後、このGPzはほぼ2年所有していた。
所有していたと言うのは、その間、結婚だなんだと色々あって、
単車で旅に出る時間が殆ど出来なかったからだ。
結婚後半年、今の配偶者と同居する事になって、今の家に転居した一週間後、
最初のGPzへの思い入れも何とやら、、、、、で、静岡県の人に個人売買で譲った。

     


Copyright ©
1989-2002 Ekimaerindo   All Rights Reserved.