"喜劇!駅前林道"単車偏屈者遍歴



英蟯虫:川崎GPz1000RX :「ノルゥエーの林」より抜粋

 



 関東から関西にに帰って来たその週末、早速バイク屋に川崎の赤いRXを注文しに行った。しかしそのバイク屋は、黒色のRXしかないし、どうせなら新型のZX10にしたら、といい加減な対応する。頭にきた僕は「赤のRXだったらここで買うけれどそれが無理ならよそをあたる」と言って店を飛び出そうとした。ここまでしてようやくバイク屋のオヤジは事態が飲み込めたようだった。

 次の週末には赤いRXに乗っていた。久々の新車だった。金が無かったのでほぼ全額ローンを組んだ。借金でもなければ会社勤めなんてやってられなかった。それにしても月々安い給料でこき使われた。夏休みに入る前にようやく慣らし運転が終わったので全開をくれてやったら流石に凄い加速で発進の度に脳味噌が後ろにぶつかって頭が痛くなったり気分が悪くなったりした。それに前方の車が一瞬にして目の前やって来るのでかわすのに大変だった。フル・パワーの世界最速車とはなんという世界だと思った。白バイもパトカーも関係無かった。しかし赤い川崎を気持ち良く走らせようとしても娑婆はゴミゴミしていてごみ貯めの様な公道を走ってもストレスがたまるばかりだった。悩んだ末、一年に数回だけ連続した時間長距離を走る事で妥協する事にした。


 

 
        

     


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